コーティングサービス(受託成膜加工)には様々な手法があり、スパッタリングはその一つです。当社では複数台のスパッタリング装置を運用し、試作開発向けの単発・少量物件から量産品の受託生産まで多岐にわたるコーティングサービスに対応しています。
●スパッタリング装置
当社のスパッタリング装置は、DCスパッタリングの他、独自のスパッタリング法であるUBM(アンバランスマグネトロン)スパッタリングがあります。コーティング中のスパッタリング装置内で磁場バランスを意図的に崩すことにより、材料のイオン化率を高め、コーティング被膜の膜質や密着性を向上させる方式です。
●コーティング材料
コーティング材料のターゲットはスパッタリング装置内に複数セットできますので、異なる材料ターゲットをセットして多元素被膜の積層成膜に対応したコーティングサービスが可能です。
コーティング中に反応ガスを導入しながら成膜する反応性スパッタリングで施工すれば、酸化物・窒化物・炭化物等の化合物被膜のコーティングサービスにも対応可能です。
スパッタリングによるコーティングサービスで現在対応可能な膜種には、以下のようなものがあります。
・単一元素系
Pt、Au、Rh、Pd、Ag、Ge、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Zr、Nb、Ta、W、Re、Ir、C、他
・合金系
TiAl、TiCr、Monel、MoS2、ハステロイ合金、ITO、AlSi、B4C、他
上記以外の膜種につきましても、コーティング材料のターゲットを準備することによりスパッタリング成膜で対応できる場合がありますので、お問い合わせください。
●スパッタリング成膜とは
スパッタリングは、ドライプロセス(乾式めっき法)の一種であり、基材と対向配置した材料ターゲットに高いエネルギーを持ったイオンを衝突させ、材料ターゲットからコーティング材料を叩き出し、基材上にコーティング材料を堆積する方式です。
●スパッタリングと真空蒸着の違い
(スパッタリング)
洗面器に水を張り、棒のようなもので表面をピチャピチャ叩く(英語でsputterといいます)と飛沫が飛びますが、例えばそこにガラス板を近づければ表面には勢いよく水の膜が着きます。これがスパッタリングの原理です。洗面器の水を塩水や砂糖水(=合金材料や複合材料)にしておけば、そのままの飛沫が飛んで膜にすることもできます。
(真空蒸着)
ヤカンに水をいれて火にかけると、ヤカンの口から水蒸気が出てきます。例えばそこにガラス板を近づければ表面には水蒸気が着いて水の膜が形成できます。これが真空蒸着の原理です。ある程度火力を上げる(=成膜速度を上げる)ことができるのが特徴ですが、水蒸気がガラスに到達する勢いはスパッタリングのときほど強くはありません。
また、ヤカンに入れる水を塩水や砂糖水にしても口から出てくるのは塩水や砂糖水の蒸気にならないのと同じで、合金材料や複合材料の成膜には難があります。
●スパッタリング成膜の特徴
液体や高温のガスに接触させることなくコーティングができるので基材への影響が少なく、廃液や排気ガス等を発生させないクリーンな成膜プロセスと言えます。
前述した例の通りスパッタリングでコーティングされる被膜は高い運動エネルギーをもって基材上に到達しますので、真空蒸着法でコーティングされる被膜に比べて密着強度を高くすることが出来ます。また、コーティングサービスを繰り返して御依頼頂くケースでは再現性が高く、コーティング品質が安定しているのも特徴です。
材料ターゲットを準備・交換すれば、低融点金属・高融点金属も対応可能で、様々な材料のスパッタリング成膜が可能です。
スパッタリングによるコーティングサービスを適用いただいた実施例として以下のようなものがあります。